
(1)正式な記帳方式である複式簿記とは
税法において,「正式な会計記録・記帳方式は『複式簿記』である」とされています。どのような方式なのでしょうか?
(1-1)複式簿記の特徴
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「複式簿記」とは,「会計取引を原因と結果の二つの側面から捉える」ことです。現金の増減だけではなく,財産の増減も把握できるのです。五つの財産の項目について,増減が把握できるわけです。
(1-2)青色申告で備えなければならない帳簿
確定申告で「青色申告」にすれば特典が多い(後述)のですが,そのためには申告に「a損益計算書」と「b貸借対照表」の提出が必要で,そのためには「c仕訳帳」と「d総勘定元帳」を備えなければなりません。
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(a)「損益計算書」そんえきけいさんしょ
売上(収入)がいくらあったか,また経費(支出)がいくらあったか,などを一覧表にしたもの。確定申告において「青色申告」する場合は,用意されている提出書面の第一表目が「損益計算書」になっています。
ちなみに英語では,現在は「損益計算書」は「Income statement」と表現されますが,硬い表現では「Profit and Loss statement」と表現されていたことから「P/L」(ぴーえる)などと呼ばれています。
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▽国税庁ホームページhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/pdf/33.pdf『損益計算書』例
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(b)「貸借対照表」たいしゃくたいしょうひょう
「a損益計算書」は通知表みたいなもの(一年間のお金の流れの一覧表)であるのに対し,
「b貸借対照表」は会社の資産の状態,つまり「どういう形で資金を集め(社長などが用意したのか,借金したのか),現在は資産がどのように貯まっているか(現金か,貯金か,土地建物や機械などか)」を表す一覧表です。
利益を,現金として保有しているのか,貯金なのか,それで土地を買ったりしたのか,借りたお金の返済に充てたのか,などの資産の状況が分かる一覧表です。
ちなみに英語では,「Balance sheet」(バランスシート)と表現され「B/S」(びーえす)などとも呼ばれています。
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▽国税庁ホームページhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/pdf/33.pdf『貸借対照表』例
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(c)「仕訳帳」しわけちょう
会計取引をそれぞれ記入していく帳面です。何月・何日に,どんな取引をしたか(相手と品目も大事ですが,もちろん一番は金額が重要ですが,帳簿上はそれがどの会計項目に属するお金かが大切です),それをあるルールに従って「借方」「貸方」に記入していきます。
(最近では,会計ソフトがある程度自動的に選択してくれますので,少しの簿記知識でも複式簿記の記載が出来ます。)
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(d)「総勘定元帳」そうかんじょうもとちょう
仕訳帳に表現された取引を,会計項目別に整理し直した一覧表です。
(2)インストラクター・トレーナーでの複式簿記
インストラクター・トレーナーとして複式簿記を行う際には,次の点に留意する必要があるでしょう。
(2-1)簿記の特徴や留意点
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[1]「売掛」が発生すること
[2]「立替」が発生すること
[3]「源泉徴収」が発生すること
[4] 報酬と交通費が合算されて源泉徴収されること
[5] 家事按分が必要な事
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[1]「売掛」が発生すること
→仕事をしても,その報酬金は翌月に振り込まれる形態が多いのではないでしょうか?
そうなると,帳簿には「仕事を行った日に【売掛】の処理」をして,「翌月に振り込まれた際に【銀行に入金】の処理」をしなければなりません。(翌月に振り込まれた事実だけで帳簿を作成すると,それは複式簿記ではなく簡易簿記です)
[2]「立替」が発生すること
→交通費は,報酬と合算されて実費を翌月に貰いませんか?
そうなると,支出として交通費を計上するのではなく,「仕事を行った日に【立て替えて交通費として出金】した」との処理を行い,翌月に「【銀行に入金】の処理」をしなければなりません。
またそうすることで,貰った金額の一部は「売上」でなく「立替金」になるので,売上金額を少なくさせることになり節税に繋がります。(合法な経理方法です)
[3]「源泉徴収」が発生すること
→個人事業主に給与を支払う場合,10%の所得税と0.21%の復興特別所得税(合計10.21%)を源泉しなければなりません。
(100万円を超える部分については更に税率が上がります。給与支払い事業所でなければ源泉されていないことになりますが)
そうなると,売上の全額が報酬として獲得できる訳ではないので,簿記の際には複数の取引を書く必要があります。→「複合仕訳」
[4] 報酬と交通費が合算されて源泉徴収されること
→立て替えた交通費は全額を貰いたいところですが,源泉徴収される場合(多くの場合は)報酬の他に交通費などもすべて合算されて源泉控除されるため,全額貰えていないことになります。(親切な事業所では分けてくれますが)
そうなると,「報酬」と「立替交通費」と「源泉徴収税」の三者をきちんと帳簿に記載しないといけません。→やはり「複合仕訳」
[5] 家事按分が必要な事
→自宅を事業の事務所として共用している場合,家賃や水光熱費など費用の一部を,経費として計上することができます。
そうなると,全額ではなく「事業に供した比率(按分)」を算定しなければなりません。何となく半額とかではなく,面積比や,コンセントの数から算定するなど,実情に合った,かつ論理的・合理的な数値を示す必要があります。
(2-2)経費になるもの,ならないもの
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事業を遂行・継続するにあたって要した経費ですから,事業と関係ない私的な費用を含めてはいけません。
インストラクター・パーソナルトレーナーとして一般的に支出が考えられる勘定科目及び内容は,以下の通りではないでしょうか。(以下の勘定科目及びその順番は,青色申告書の形式に従っています)
租税公課 インストラクター・パーソナルトレーナーでは例が少ないでしょう。
*領収書を発行した際に印紙を貼った(領収金額が5万円を超える場合に200円の収入印紙を貼ります),
*「消費税」を支払った場合(年間の売上が1000万円を超えた場合に翌々年度から消費税が発生します),
国税庁ホームページhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/shouhi.htm
*「個人事業税」を支払った場合
(インストラタクー・パーソナルトレーナー業は「諸芸師匠業」に該当します。青色申告特別控除を除いた事業所得が290万円以上※の場合に発生します。※青色申告特別控除65万円を含めると225万円以上ということになります)
▼個人事業税についてはこちらで確認しましょう(東京都主税局のホームページ)
申し訳ございませんが居住する都道府県のホームページにて再確認をお願い致します。
*「固定資産税」を支払った場合
(自宅を営業場所・事務所として活用している場合は,一定の割合について計上できます。)
*「自動車税」を支払った場合
(自家用車を活用している場合は,一定の割合について計上できます。)荷造運賃 インストラクター・パーソナルトレーナーの業務以外に,何か物品の販売(仕入れ・発送)をしていればこれに該当しますが,多くのインストラクター・パーソナルトレーナーでは不必要でしょう。
なお郵便物・切手代は『通信費』に該当します。水道光熱費 自宅を営業場所・事務所として活用している場合は,一定の割合について計上できます。
完全にその建物を事業に使用しているなら100%ですが,自宅の一部を利用している場合に「何となく半分,50%」というのは不適切です。(詳細は後述)旅費交通費 (この勘定科目は,特に注意が必要です)
職場に移動する電車代などが該当しますが,
インストラクターの場合は,
「自分のお金で(立て替えて)交通費を支払い,翌月に(報酬と一緒に)交通費も受け取る(振り込まれる)」場合は,支出として旅費交通費にするのではなく,「立替金」仕訳をする処理が必要です。(その方が節税にもなる)
パーソナルトレーナーの場合は,
(a)交通費相当額が相手方から別途に貰えれば「立替金」仕訳[※],
(b)別途に貰えない(支給されない場合や報酬に含まれる場合)は経費「旅費交通費」として支出する処理をします。
※厳密に言えば:個人宅へ出向いてパーソナルトレーニングを行い,往路は立て替えて電車代を払ったが,復路は貰った交通費で電車代を払った場合は,前者は「立替金」仕訳,後者は経費「旅費交通費」仕訳となりますが,交通費往路分を頂いたお金から分けて複合仕訳するのも処理が煩雑ですから,上記のように「トレーニング報酬と別途に交通費を貰ったか」を根拠に処理するのが現実的です。・・・
なお交通費の実費金額を超えて「交通費の名目のお金」を貰った場合(「おくるま代」など)は,もはやその全額を「立替金」仕訳することは出来ません。
「交通費の名目のお金」も売上に含め(場合によっては補助科目を作るなり,「雑収入」=事業外収益[法人経理での雑益]にするなり),実費を「旅費交通費」として支出します。
注意!!「(スイカ・パスモなど交通系ICカードに)チャージする」のは「旅費交通費」の支出には出来ません!!
あくまで「実際に乗った時点で経費に計上」しなければなりません!!,お気を付け下さい。あまりに金額が大きい場合やそのICカードで何か物品を購入している場合などは,脱税行為だと見做されてしまいます。(チャージで費用計上して,そのICカードで何か物品を購入した場合も費用として計上してしまうと,悪質な二重計上~不正経理→脱税行為です。)通信費 これは度々あるでしょう。
*敷設電話の利用料金(プライベート個人消費分との按分が必要です),
*携帯電話の利用料金(プライベート個人消費分との按分が必要です),
*切手・ハガキ代,
*ホームページを開設している場合のサーバーレンタル料,
*インターネット接続の料金(プライベート個人消費分との按分が必要です),
などが考えられるでしょうか,客観的に示せる根拠ある数値で按分する必要があります。
按分については「何となく半分,50%」というのは不適切です。(詳細は後述)広告宣伝費 「名刺」を業者に発注した場合などは「広告宣伝費」です。
(コピー(代)なら「雑費」です)
何か宣伝物(いわゆる宣材)として配布する販促品も,不特定多数に頒布するなら「広告宣伝費」ですが,誰か特定の人に差し上げる場合は「接待交際費」です。接待交際費 これは度々あるでしょう。
*お世話になっている方に,季節の贈答(お中元・お歳暮),
*冠婚葬祭。
*インストラクター仲間・パーソナルトレーナー仲間での打ち合わせ・情報交換の飲食,懇親会,
*職場の飲み会にお誘いを受けて,その会費。損害保険料 多くのインストラクター・パーソナルトレーナーでは不必要でしょう。
*自宅を事業用または事務所として活用している場合の火災保険(地震保険や長期保険は別途に控除があります),
*自家用車を事業用として活用している場合の自動車保険(別途に車両費という勘定科目を作って,自動車関連はそこに集約する方法もあります),
*個人的遊興でなく仕事として行く旅行での傷害保険
などが考えられるでしょうか,それらの場合も客観的に示せる根拠ある数値で按分する必要があります。修繕費 多くのインストラクター・パーソナルトレーナーでは不必要でしょう。
*自転車の修理代(自動車は修繕費に含める場合と,車両費にまとめる場合の二つがあります),
*自宅を事業用または事務所として活用している場合の修繕費用
などが考えられるでしょうか。客観的に示せる根拠ある数値で按分する必要があります。
リフォームなど,「修理=原状回復」の域を超えて「固定資産の価値を高める支出」は「資本的支出」と呼び,全額を修繕費に計上することが出来ません。消耗品費 これは度々あるでしょう。
*文具
*レッスンで専用に着る衣服(プライベート利用しない前提)
*レッスンで使う備品
*パーソナルトレーニングでこちらが用意するトレーニングアイテム
*レッスンで頻繁に洗濯しなければならない場合に,洗剤も消耗品に計上しても良いでしょう。ただし客観的に示せる数値で費用按分する必要があります。
(例えば「レッスンの無い日に比べて,レッスンのある日は洗濯物の量/体積が#倍になるから,##%は事業消費分と考えられるから,それを計上する」など。)減価償却費 仕事に使う10万円以上の物品があれば該当します。
可能性としては,【パソコン】【自動車】【バイク】【電動自転車】でしょうか。(プライベート個人消費分との按分が必要です)
減価償却は,高額な物品(1年間で使い切らない物品)について,全額を一度に計上するのでなく,何年かの分割で費用に計上する考え方です。
青色申告では,(30万円以下の場合などに)一定の条件で全額を計上しても良い場合もあります。福利厚生費 判断が難しい勘定科目だと言われています。
まず第一に,基本的には「従業員のための費用」と考えましょう。
*従業員のための社会保険料や雇用保険料の事業主負担分,
*従業員の慶弔費(冠婚葬祭費用,結婚祝い・出産祝い・お香典),
*懇親会や忘新年会などの費用,あるいは社員旅行の費用,(社員全員参加の公的行事の性格が無いといざ調査に入られた際に否認される場合もあるとのこと)
*従業員のための事業所・事務所のお茶・コーヒー代など
ただ「インストラクター・パーソナルトレーナーの場合に,身体が資本ということで自身が業務遂行のために必須必要としてスポーツクラブに別途通う場合は,福利厚生費ということになる」と解する税理士も居ます。
ただし見解が分かれるようですし,全額を事業費用と見做すのには無理がありますから,50%按分などでの計上が妥当です。給料賃金 自分以外に誰かを従業員として雇っている場合ですので,多くのインストラクター・パーソナルトレーナーでは不必要でしょう。 外注工賃 自分以外に誰かに業務を外注する場合です。代行をして貰った際に支払ったお金は,ここに計上します。
ちなみに,給与・賃金は消費税非課税ですが,外注工賃・外注費は消費税課税です。利子割引料 事業用に借入をした際に支払う利息(つまり金利手数料)ですので, 多くのインストラクター・パーソナルトレーナーでは不必要でしょう。 地代家賃 自宅を営業場所・事務所として活用している場合は,家賃や礼金(20万円以内)・契約手数料などについて,一定の割合について計上できます。
完全にその建物を事業に使用しているなら100%ですが,自宅の一部を利用している場合に「何となく半分,50%」というのは不適切です。(詳細は後述)
なお,「いくら家賃を払って,そのうちいくらを計上したか。誰に支払ったか」を青色申告書に記入する欄がありますので,何パーセントを経費にしたか結局バレます。
同居家族に支払う家賃は経費にできません。
保証金・敷金(支払ったのではなく解約時に戻ってくるもの)は経費にできません。(資産になるから不可です。敷金が戻ってきた際の引かれた分は経費にできます)貸倒金 仕事先が倒産して働いた報酬が受け取れない場合に活用します。「貸倒引当金」の方法もありますが,先方が倒産のリスクがあるというのは予測もしにくい業種ではありますね。 雑費 よくある例は,
*コピー代(販促目的であれば広告宣伝費ですが),
*銀行振込の手数料(もしたびたび発生するなら「支払手数料」勘定科目を別途に作成すべきです),
*神社お寺のお賽銭や御供物代
*神社お寺で祈願祈祷を受けた場合(商売繁盛や事業繁栄など仕事目的なら全額,無病息災や厄難消除など自分目的なら半額按分でしょうか)
(以下の勘定科目は,青色申告書にもともと用意されていないが一般的によくあるものです)
新聞図書費 *書籍の購入(当然のことながら,仕事に関係する書籍) 研修費 *資格の取得に講習を受けた
*資格の更新に講習を受けた
※「研修費」に計上するためには,「その費用が職務を遂行する上において直接必要な資格を取得するためのもの」でなければなりません。「将来の転職を考えて資格を取った」などの場合は計上できません。(「個人に一身専属的に帰属するもの」と判断されます。)車両費 *車検の費用(プライベート個人消費分との按分が必要です),
*ガソリン代(少額であれば「旅費交通費」にまとめる場合もあります),
※一般的には,自動車税は「租税公課」,保険は「損害保険料」に計上します。支払報酬 *弁護士に支払った報酬
*税理士に支払った報酬
(士業の方に支払った報酬のことで,代行で支払ったお金や外注したことにより支払ったお金はここには入りません。→外注工賃です。)
なお,弁護士・税理士などに支払った場合は青色申告書に詳細を記入する欄がありますので,忘れずに書きましょう。「支払報酬」は「支払手数料」勘定科目に属することから,「支払手数料」にまとめる場合も多いです。
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■以下は,計上できない費用です。ご注意ください。
[1]租税公課に似ているもの
*所得税の納付金
*住民税の納付金
*国民健康保険料(別に控除される金額です。経理上は別にして下さい)
*国民年金の掛け金(別に控除される金額です。経理上は別にして下さい)
*源泉所得税の納付金(「事業主貸」処理が必要です→「複合仕訳」)
[2]損害保険料に似ているもの
*生命保険の保険料(別に控除される金額です。経理上は別にして下さい)
[3]その他
*家事消費した商品
*病院代(病院代は経費としては計上できませんが,医療費控除の仕組みがありますからレシートを保管しておきます。レシートの原本が必要です。)※人別・病院別にまとめてリストを作成する必要があります。10万円を超えた金額について所得金額から控除されます。実際には12万円・13万円を超えていないと還付金の金額には影響しませんが。そうなると毎月1万円以上を支払っているかですが。
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■国税庁ホームページhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm(必要経費/計上できない経費)
(必要経費に算入する場合の注意事項)
(1)個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。(例)交際費,接待費,地代,家賃,水道光熱費
この家事関連費のうち必要経費になるのは,取引の記録などに基づいて,業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。
(2)必要経費になるものとならないものの例
イ,生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは必要経費になりません。逆に,受取った人も所得としては考えません。
これは,土地や家屋に限らずその他の資産を借りた場合も同様です。ただし,例えば子が生計を一にする父から業務のために借りた土地・建物に課される固定資産税等の費用は,子が営む業務の必要経費になります。
ロ,生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金(青色事業専従者給与は除きます。)は必要経費になりません。
(注)青色申告者でない人についての事業専従者控除の金額が,必要経費とみなされます。
ハ,業務用資産の購入のための借入金など,業務のための借入金の利息は必要経費になります。
(注)不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地等を取得するために要した負債の利子の額は,不動産所得の計算上必要経費になりますが,不動産所得の金額が損失(赤字)となった場合には,その負債の利子の額に相当する部分の損失の額は生じなかったものとみなされ,他の所得金額との損益通算はできません。
ニ,業務用資産の取壊し,除却,滅失の損失及び業務用資産の修繕に要した費用は,一定の場合を除き必要経費になります。
ホ,事業税は全額必要経費になりますが,固定資産税は業務用の部分に限って必要経費になります。
ヘ,所得税や住民税は必要経費になりません。
ト,罰金,科料及び過料などは必要経費になりません。
チ,公務員に対する賄賂などについては必要経費になりません。
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■よくある質問
「『仕事に使った。』と言い切れない物は経費に入れられない」が基本ですが。
[1]消耗品など
*(消耗品費)レッスン・施術するために化粧品→【50%~70%などが妥当】
...いくら仕事で使うと言っても,普段の外出時にも使う可能性が否定できず,100%全額を費用に計上するのは困難だと解するのが一般的です。勿論,必ず仕事でしか使わない(例えば汗で落ちにくい化粧品を使うなど)のであれば,100%計上しても何ら問題は有りません。税務調査の際はそう答えるべきです。
*(消耗品費)レッスン・施術するためにメガネ・コンタクトレンズ→【 同上 50%~70%などが妥当】
*(通信費)携帯電話料金→【 同上 】
...これまた仕事で100%使ってはいないでしょう。下手すると,音楽やゲームの課金もしていませんか?
*(通信費)携帯電話料金の他にも家の電話の料金も計上したい→【どちらも事実の通りに按分します】
[2]交通費など
*クラブ・スタジオや御自宅などへの往復交通費(電車で移動)→【100%全額を経費として計上できる】
...ただしいったんは自分で立て替えておき,翌月にその実費が報酬と共に振り込まれるなら,「旅費交通費」として経費を計上するのではなく,「立替金」として「売上」の一部から差し引く処理をします。(正しい処理であり,正当な節税)
*往復交通費(自家用車で移動)→【ガソリン代は使った分の全額を経費として計上できる】【購入代金・修理整備費・車検費用・自動車税などは全額ではなく按分する】
...10万円以上の物品を購入した場合は,何年かの分割で経費に計上する(減価償却)に注意。しかも減価償却の場合は,按分率を記入する欄があるため注意。
[3]研修費など
*ヨガなど資格更新のために講習を受けた→【100%全額を経費として計上できる】
...「研修費」に計上するためには,「その費用が職務を遂行する上において直接必要な資格を取得するためのもの」でなければなりません。
*将来に備えて簿記の資格を取る為に通信教育を受けた→【経費にできません】
...「将来の転職を考えて資格を取った」などの場合は計上できません。(「個人に一身専属的に帰属するもの」と判断されます。)
[4]家賃など
*自分の持ち家でヨガレッスンをしている→所有者(名義)が自分もしくは生計を一にする同居親族であれば,支払っている固定資産税の一部を経費に計上できます。
*親が借りているマンションについて毎月家賃(もしくは家賃相当の金額)を払っている→親族に支払う家賃は計上できません。
*自分の借りているマンションでヨガレッスンをしている→支払っている家賃の一部を経費に計上できます。その際に,
1,使っている部屋は,借りている部屋全体の面積の何パーセントなのか計算しましょう。部屋全体の面積は「賃貸借契約書」に記載されています。そしてその部屋が「何畳の部屋」か分かれば,「1畳=1.6m2」で計算しましょう。
※マンションの洋室は「1.8m×0.9mの1.62m2」で計算されるのが通例です。ただし壁の中心における部屋の面積ですから,実際に住んでいる部屋は壁が厚ければ厚いほど,また構造上の柱が多いほど,狭くなりますね。また和室であれば,江戸間・京間で面積が違ってきます。
2,その部屋を,レッスン専用にしているのか(使用しない時は施錠して使わない,私物の物置にもしていない。のか),来客時の応接室を兼ねているのか,により,さらに何パーセントを事業に供しているかを割り出します。
※私田中の場合,「1→事業に供している部屋は全体の27%」,「2その部屋では日常生活(食事や寝起き)をしないが私物の荷物も一部置いているため50%に減じて按分」という訳で,「27%×50%=14%」にて家賃を計上しています。
3,「何となく半分くらいだから50%」というのはあまりにも根拠が希薄です。(居室以外にも,台所・洗面所・風呂・トイレがありますね。そこは事業専用ではありませんしね。)
※50%では電話が掛かってくるとよく仲間内で話になっています。税理士事務所の経験を踏まえると,個人事業主が自宅兼用で使う場合は,「3割」が妥当なラインではないでしょうか?
4,「家賃の年間合計額」を記入する欄もありますから,按分率がどれほどかは計算されます。実態に即した・根拠ある数字で家賃を経費にしないと,電話が掛かってくるか,自宅に税務署の方が拝見に来ますよ。
5,「家賃」は按分して経費にできますが,「敷金」は経費に出来ません。退去時に一部差し引かれますが「戻ってくるお金」だからです。引かれた金額の一部は経費にできます。
(2-3)経費率50%
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◎経費に入れて良いか否かの判断基準
次の二点を判断の基準とします。
[1]収入を得るために必要な経費か
[2]家事関連費(按分する場合)は実態に即して明確に区別できるか
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[1]収入を得るために必要な経費か
→「私的な費用で無く,その支出があるからこそ収入が増えるのか?」。つまり「その支出がなければ,収入が減ってしまうのか?」を自問してみましょう。
[2]家事関連費(按分する場合)は実態に即して明確に区別できるか
→「万が一,税務調査で自宅に税務署職員が来ても,客観的な理由によりパーセンテージを説明できるのか」を想定してみましょう。(自宅に来る場合は,よほど確認する必要がある場合ですが,電話で尋ねられることはよくあるのだそうです。)
*家賃の場合:面積で算定した。(全体の面積が$$平方メートルで,そのうち$$平方メートルを仕事の部屋にしている)
*電気代の場合:コンセント口数で算定した。(全体のコンセント口数が$$個で,そのうち$$個を仕事に使っている機器に接続している)
(経費かどうかを判断し税額を決定するのは税務署長ですから,職員係官を説得できる客観的根拠が必要です。)
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◎「経費率」に注目しましょう
「売上」金額に対する「経費」金額を「経費率」と言います(収入に占める支出の割合です)
「経費率」は職種によって平均値があり,サービス業は「50%」です。
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青色申告で提出する「損益計算書に,売上金額や経費の内訳を書いていく」のですが,
「経費の合計」と「売上との差額」(営業利益)を記入する欄が縦並びにあり,一目瞭然に経費率が50%かが分かります。
「経費率」が職種によって指定されている訳ではありません。
ただし消費税の計算に於いて,課税品・非課税品(例えばコンビニでドリンクとハガキを買った場合に,ドリンクは消費税が掛かる,ハガキは非課税です)も全てきちんと区別して経理処理するとなると煩雑であることから,
事前に届け出れば簡単な計算で良しとされて(簡易課税制度)いて,その場合に「みなし仕入れ率」という数値が規定されています。
何かを販売する商売であれば,物品を仕入れて販売する訳ですが,その率を業種ごとに指定している訳です。(商品販売で掛かった消費税から,仕入れで掛かった消費税を引く。それにあたり,売上金額の何パーセントを仕入れとみなして引き算して良いという制度。)
「売上」(収入)から差し引く支出は「仕入れ費用」と「経費」ですが,販売業であれば「仕入れ費用」が大半です。そしてその率が指定されている訳です。
我々インストラクター・パーソナルトレーナーは販売業では無い商売なので(仕入れは無いため),「一般的なサービス業=仕入れ率50%」を超えて経費が掛かっているのは不思議に思われる,ということです。
昔は「業種ごとの概算経費率」というものがあったようです。
(生命保険外交員は44%,原稿執筆業や講演講師業は30%,不動産賃貸業は20%,など。
正確には税務署内部文書の数値(表)であり,また個別通達で個々に公になっていたものが,税務署出身の特任税理士などが使っていたなどで広く知れ渡ったようです。今でも医師・歯科医師の診療報酬の計算に用いられている概念ではあるようです。)
今でも,税務署で数値化されている「各種業種における経費率の平均値」は存在します。したがってあまりにその平均値より多ければ,当然疑いのまなざしが向けられることになります。
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◎経費率とは利益率の裏返し
「経費率」とは裏返せば「利益率」です。売上から経費を引けば,残りは利益。粗利(あらり)とも言います。
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※損益計算書(P/L)に従ってもう少し詳しく述べると,
(1)売上から仕入れを引いた金額が,実際の売り上げた金額です。
*売上のことを(P/L)では「売上高」と言います。
*物品を仕入れるのに掛かった費用を(P/L)では「売上原価」と言います。
*それらを差し引いた金額を(P/L)では「売上総利益」(うりあげそうりえき。略してウリソウとも)と言います。
(2)さらに経費を引いた金額が利益の金額です。
*経費のことを「販売費及び一般管理費」もしくは略して「販管費」と言います。
*売上総利益から販管費を差し引いた利益のことを(P/L)では「営業利益」と言います。
*青色申告では,この営業利益から65万円を引いた金額を「事業所得」として記載することになります。(青色申告は利益を少なく申告できる制度なのです)
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◎経費率が高いデメリット=お金を借りれなくなる
「経費率」が高ければ,「利益率」は低く,「売上が高くても経費にお金が掛かっていて儲けは少ない。」と判断されるため,「銀行・信金(あるいは公的融資機関など)などからお金を借りられない」ことになります。
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今は個人事業主でも,将来的には自分のスタジオを持ちたい,もしくは自宅を改装したい?,新たな事業展開を進めたい,という時に,
銀行・信金(あるいは公的融資機関など)の審査をパスできなくなる,ということにもなります。過去何年かの損益計算書・貸借対照表が必要ですから,確定申告の書類を提出することになりますから。
(3)複式簿記の実例:勘定科目(収入編)
複式簿記では「借方」「貸方」に気を付ければ良い(あとは日付と金額を入力するだけ)ですから,以下を参考になさって下さい。
【case1】売り掛け
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借方 貸方 金額 摘要 売掛金 売上 ¥108,000 ○△スポーツクラブ10月分
【case2】報酬(売上金)が振り込まれた
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借方 貸方 金額 摘要 普通預金 売掛金 ¥108,000 11月25日振込,○△スポーツクラブ10月分
【case3】交通費の立替え
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自分のお金で交通費を立て替えておいて,後日その分の金額が報酬とともに振り込まれるなら,以下のように「立替金」勘定科目を使用します。
一方で(交通費分も報酬に含まれていて)先方から別途に貰わない場合は,「旅費交通費として支出した」となるため,「旅費交通費」勘定科目を使用します。(後述)
▼「プライベートのお金(現金でも・カードでも)」で支払った場合
※たいがいは,仕事用とプライベート用で別々の財布は利用していないと思いますから,そんな時のために「事業主借」という帳簿上の仕組みを使いましょう。
借方 貸方 金額 摘要 立替金 事業主借 ¥640 中野坂上~新宿~目黒(往復) -
▼「仕事用のお金・現金」で支払った場合
借方 貸方 金額 摘要 立替金 現金 ¥640 中野坂上~新宿~目黒(往復)
そうなると,面倒かもしれませんが,
{振り込まれた金額全てを「売上」とし,支出として「旅費交通費」に計上する}よりも,
{立て替えた交通費は「立替金」として,報酬の金額とは切り離す}方が,
より実態に即していて!!,「売上」金額も低くなる!!!!(節税) ことから,適切な経理です。…ちなみに私(田中)は,勘定科目「立替金」に補助科目「立替交通費」を作り,金額を毎月追い掛けています。
【case4】複合仕訳
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実際は「報酬からは源泉控除される」ため,銀行口座に振り込まれた事実は一つでも,経理上は三つに仕訳けないといけません。
▼報酬(¥100,000)から源泉(¥10,210)控除され,交通費(¥20,000)は全額が振り込まれた場合
借方 貸方 金額 摘要 普通預金 売掛金 ¥89,790 1月報酬¥100,000だが源泉¥10,210控除された 事業主貸 売掛金 ¥10,210 源泉控除 普通預金 立替金 ¥20,000 立て替えた交通費 -
(前述しましたが)「交通費が報酬と合算されて源泉控除されてしまう」場合が多いので,その場合は以下の仕訳をします。
▼報酬(¥100,000)と交通費(¥20,000)が合算(¥120,000)されて源泉(¥12,252)控除された場合
借方 貸方 金額 摘要 普通預金 売掛金 ¥89,790 1月報酬¥100,000だが源泉¥10,210控除された 事業主貸 売掛金 ¥12,252 源泉控除(報酬と交通費を合算) 普通預金 立替金 ¥17,958 立替交通費¥20,000だが源泉¥2,042控除された
(4)複式簿記の実例:勘定科目(支出編)
複式簿記では「借方」「貸方」に気を付ければ良い(あとは日付と金額を入力するだけ)ですから,以下を参考になさって下さい。
【case1】旅費交通費
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「旅費交通費」は青色申告(書)において,既に用意されている勘定科目の一つです。
▼「プライベートのお金(現金でも・カードでも)」で支払った場合
借方 貸方 金額 摘要 旅費交通費 事業主借 ¥640 中野坂上~新宿~目黒(往復)
【case2】消耗品費
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「消耗品費」は青色申告(書)において,既に用意されている勘定科目の一つです。
▼「プライベートのお金(現金でも・カードでも)」で支払った場合
借方 貸方 金額 摘要 消耗品費 事業主借 ¥5,100 レッスンで使うアロマディフューザーを購入
【case3】接待交際費
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「接待交際費」は青色申告(書)において,既に用意されている勘定科目の一つです。
▼「プライベートのお金(現金でも・カードでも)」で支払った場合
借方 貸方 金額 摘要 接待交際費 事業主借 ¥5,250 勤務○○社△△氏結婚祝い
【case4】新聞図書費
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「新聞図書費」は用意されている勘定科目ではありませんが,おそらく多くのインストラクター・パーソナルトレーナーが利用する勘定科目ではないでしょうか。
▼「プライベートのお金(現金でも・カードでも)」で支払った場合
借方 貸方 金額 摘要 新聞図書費 事業主借 ¥2,100 『ピラティスアナトミー』ガイアブックス社
【case5】研修費
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「研修費」は用意されている勘定科目ではありませんが,おそらく多くのインストラクター・パーソナルトレーナーが利用する勘定科目ではないでしょうか。
▼「プライベートのお金(現金でも・カードでも)」で支払った場合
借方 貸方 金額 摘要 研修費 事業主借 15,750 ○×ヨガ資格更新講習の受講料
(4-2)複式簿記の実例:勘定科目(家事関連費)
【case1】地代家賃
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「地代家賃」は青色申告(書)において,既に用意されている勘定科目の一つです。自宅を事業の事務所として共用している場合,費用の一部を経費として計上することができます。
ただし共用しているからといって「50%」というのは軽率です(まず間違いなく税務署から電話が掛かってきます)。
「2部屋のうち1部屋を使用しており,その部屋は全体の延床面積のxx%だから,家賃のxx%を経費として計上する」という客観的事実に基づく数値でなければなりません。 (「家賃」などを年間でいくら支払ったのか記入する欄もありますから,根拠のある数字を示す必要があります)
▼「プライベートのお金(現金でも・カードでも)」で支払った場合
借方 貸方 金額 摘要 地代家賃 事業主借 26,000 家賃¥100,000の26%按分
【case2】水光熱費
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「水光熱費」は青色申告(書)において,既に用意されている勘定科目の一つです。自宅を事業の事務所として共用している場合,費用の一部を経費として計上することができます。
電気料金では「使用コンセント口数」など,客観的事実に基づいた按分(率),不明であれば家賃の面積按分を採用して,計上します。
▼「プライベートのお金(現金でも・カードでも)」で支払った場合
借方 貸方 金額 摘要 水光熱費(電気料金) 事業主借 2,600 電気料金¥10,000の26%按分
【case3】通信費
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「通信費」は青色申告(書)において,既に用意されている勘定科目の一つです。自宅を事業の事務所として共用している場合,費用の一部を経費として計上することができます。
通信費には,「切手・ハガキ代」「電話使用料」「携帯電話使用料」「インターネット接続料」「ホームページ管理料」などが含まれます。
(例えば,仕事用に別の携帯電話を使っているのであれば,その料金の全額でしょう。インターネット接続は,全額が仕事だとは言えないでしょう。)
▼「プライベートのお金(現金でも・カードでも)」で支払った場合
借方 貸方 金額 摘要 通信費(携帯電話料金) 事業主借 2,600 携帯電話料金¥10,000の26%按分
(5)確定申告とは
確定申告とは所得税の自己申告をする手続き
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よく2月頃になると「確定申告(かくていしんこく)」という言葉を耳にします。確定申告とは「収入に応じて支払う税金=所得税」について自己申告する手続きです。
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【確定申告とは所得税の計算】
所得税は,【収入金額(売上)】から【所得金額(課税される金額)】を計算しなければなません。(詳細後述)
会社員(サラリーマン)だと会社の担当者(経理部)がやってくれるのに対し,個人事業主(フリーランス)の場合は,自分でやらなければなりません。どうしたら良いか分からずに,普通の確定申告(白色申告)で済ませたり,もしくはお金は掛かりますが税理士さんに依頼したりする方が多いでしょう。
週末だけインストラクターしている方で,確定申告していない方は,まさかいらっしゃいませんよね?(脱税ですから絶対にいけません。税金はどこまででも追い掛けられます,しかも2~3倍を追徴されたりします。)
事業を始めるということは,収益を上げるだけでなく,法律・手続きも厳守しなければなりません。「知らなかった」では許して貰えません。
※こちらの記事を参照して下さい。
■「コンプライアンス法令順守」脱税の罰則:確定申告をしない(所得税を支払わない)場合には
ちなみに「年末調整」という制度もあります。「控除」(=所得税の計算をするにあたって,いくつかの項目の金額は,収入から引いて計算する,という仕組み)の再計算まで,会社が行ってくれるということです。
個人事業主(フリーランス)の場合は,会社でやって貰える訳ではありませんので,やはり自分自身で「確定申告」により,すべての計算(精算)をしなければなりません。
確定申告しなければいけないの?
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会社に勤務し「お給料」を貰っている方(給与所得の方)は,会社で所得税を「源泉徴収」するため,「年末調整」を受けていれば確定申告は不要です。給与から所得税が差し引かれて(天引き)給料を受け取るため,自動的に所得税は支払われたことになります。
多くのサラリーマンは,確定申告をしなくて良い訳です。しかし,
*給与でない所得がある方(業務委託契約による報酬がある,成果歩合報酬がある,または不動産収入がある,など)
*給与の他に20万円以上の所得がある方(兼業の方)
*給与年収が2000万円を超える方
・・・などは確定申告しなければなりません。
インストラクター・パーソナルトレーナーでは,
【1】フリーランス(業務委託契約)で働いている
会社もしくはその店舗と業務委託契約を結んでいる方,
つまり『事業所得』を得ている方は,
→【確定申告が必要】 フリーランスのインストラクターやパーソナルトレーナーは「個人事業主」です。自分が社員であり・社長です,誰かが計算・納税してくれる訳ではありません。ですから「自分で」計算し,所得税を納めなければなりません,確定申告が必要です。
【2】会社に雇用(労働契約)されて働いている
所属する会社の業務の一つとしてレッスンインストラクションやパーソナルトレーニング指導をしている方,
つまり収入が『給与所得』の方は,
かつ 年末調整をした→【確定申告は不要】
年末調整が済んでいない→【確定申告が必要】
【3】兼業している方
「スポーツクラブでスタッフアルバイトしながら,他社でフリーランスイントラ・パーソナルトレーナーをしている方」や「会社に勤めていて,週末だけイントラしている方」など,つまり『給与所得』と『事業所得』の両方がある方は,
→【確定申告が必要】
※『給与所得』『事業所得』との言葉や概念は次章で説明します
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どこかのサイト(お悩み相談系)で「収入が(年間で)38万円以下なら確定申告しなくて良い」などと書かれていましたが,誤解しないようにしましょう。
*『事業所得』を得ている方(上記の【1】)が,それが「専業である」場合は,「(年間で)38万円以下であれば,所得税の確定申告は不要」です。(基礎控除が38万円なので,売上から38万円を引いた金額が所得税の計算に使われるため,38万円以下であれば0になってしまうため。詳細は後述します)
しかしながら,
*『事業所得』以外に『給与所得』も得ている人(つまり兼業の人,上記の【3】)で,「事業所得が(年間で)20万円以上であれば,所得税の確定申告は必要」です。
(詳しくはこちらで確認しましょう)
(6)売上金額と所得金額
報酬を貰っていますか?,給与を貰っていますか?
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(1)給与を貰っている →経費を計上することは出来ない
前項【2】・・・会社に雇用されて働いている方は,『給与所得』を得ていることになります。毎月毎月「給与」を貰い,年度末には【源泉徴収票】を貰いませんか?
(2)報酬を貰っている →経費を計上できる
前項【1】・・・フリーランス(業務委託契約)で働いている方は,『事業所得』を得ていることになります。毎月毎月「報酬」(10%が引かれた金額)を貰い(100万円を超える部分については20%引かれる),年度末には【支払調書】を貰いませんか?
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報酬なの?給与なの?
【A】会社に雇用されて働いている方は「給与所得」を得る→「源泉徴収票」が発行される→(原則として)経費は計上できない
源泉徴収票は,会社が必ず発行しなければならない書類です。退職した場合も,一か月以内に発行しなければならないことになっています。
もし貰えない場合は,会社に直接請求する他,会社所在地の管轄税務署に「源泉徴収票の不交付の届出」を申し立てることができます。
「給与所得」の場合は,65万円を差し引いた金額→つまり「給与所得」が,所得税額を決める際に参照されます。(年収162万5000円以上の場合はさらに細かく給与控除金額が決まっています)
さらに全ての人は,各種所得の合計から38万円を差し引く(基礎控除)ことになるため,(給与所得控除65万円+基礎控除38万円=)103万円未満であれば,所得税が掛からない訳です。よく「所得税対策として年収103万円に抑える」と表現するのはそのためです。
また最近では,経費としてまったく認められない訳ではない(サラリーマンのスーツ代など仕事上必要と客観的に認められる個人で支払った経費)ので,確定申告により戻ってくる場合もあります。(会社承認の書類が必要であるなど,一定の条件をクリアしないといけません。)
給与所得控除は「全員一律で65万円を経費とみなして差し引きます」という制度なので,アルバイト契約でインストラクター・パーソナルトレーナーをしている方は,交通費やら研修費やら衣装代やらを経費として計上することは出来ません。
【B】フリーランスで働いている方は「事業所得」を得る→「支払調書」が発行される→経費を計上できる
支払調書は,法律で必ず発行しなければならないとは定められていません。従って,貰えない場合もあります。
またその会社が給与支払団体になっていない場合(給与を支払う従業員を雇っていない場合)は,支払調書が発行されないだけでなく,源泉徴収もされていません。(従って戻ってくる還付金も有りえません)
したがって「支払調書」を確定申告書にも添付する義務はありませんが,手元に有るなら証憑として添付した方が望ましいと言えます。
事業所得の場合は,必要経費などを差し引いた金額→つまり「事業所得」が,所得税額を決める際に参照されます。(詳細は以下の図を参照)つまり,仕事の上での必要経費は差し引けることになります。
ちなみに納める税金は,【所得税】の他にもあります。
*【住民税】(=都道府県民税と,市区町村民税)
*【健康保険料税】(健康保険料とは,税金なんです)
それらの金額は,所得税の計算の金額より算定されますので,確定申告で所得金額が減らせるなら,減らすに越したことはないですね。
さらに,一部の方ですが,
*【個人事業税】・・・「所得金額」(売上から各種控除金額を引いた金額)が290万円を超えたら,「個人事業税」が掛かります!!
*【消費税】・・・「売上」が1000万円を超えたら,翌々年度に「消費税」の納税義務が生じます!!(翌々年度の収入が少なくても消費税の納税義務が課せられます。また,半期で1000万円に達した場合は,その年度より消費税の納税義務が課せられます。ご注意下さい)
余談ですが,会社を退職して独立した場合,住民税や健康保険料税は,前年の所得を参照しますから,収入が減った場合に払うことが困難になるほどの高額な税金を課せられる場合がありますから,退職前から貯金をし,また退職金が出た場合も安易に使わないようにしましょう。
さて「還付金」ですが,納めた税金が多すぎる場合は,年末調整もしくは確定申告後の還付金として,一部が返金されます。学生であったり,多額の医療費を払っていたり,保険料の支払いが多額だったりする時は,必ず申し出ましょう。
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行政指導を受けたインストラクターが居ます!!
大手フィットネスクラブで,通常は「業務委託契約」で従事するインストラクター・パーソナルトレーナーを,ジム・プール・レセプションを担当するスタッフ従業員ではないにも関わらず,レッススンのみ・もしくはパーソナルトレーニングのみであるにも関わらず「労働雇用契約」(アルバイト契約)する事例があるようです。(おそらく会社側の事情,株主に対する配慮などがあるのでしょう)
会社側も厚遇している訳ですからインストラクターにとっても有利な面が場合により有りますが,その勤務では「給与所得」を得ることになる為,(「事業所得」ではないため)経費を計上して課税所得額を減らすことはできません。(給与控除として65万円が引かれるだけ)
税理士に依頼していたにも関わらず,所轄税務署から行政指導を受けた契約インストラクターもいます(そんな特殊事情を税理士も把握しきれなかったのでしょう)ので,お気を付け下さい。
*労働契約(雇用契約)→給与所得なので「経費は65万円(+α)」と自動的に定められる。経費を更に計上することは出来ません。
*業務委託契約→事業所得→事業をするにあたって掛かった費用を「経費」として「売上」から差し引いて税金計算ができる。
※所得税の話であれば,「サービス業の経費率は50%(まで)とされている」(みなし仕入れ率の考え方)ので「130万円の売上があれば→経費65万円」となるため,「【130万円以上の年収であれば損】な契約方法である」と言えます。
週20時間以上業務をしているのであれば雇用保険(失業給付の保険)がつく(はず)ですし,深夜時間帯のレッスンであれば1.25倍の割増給与になる(はず)なので,年次有給休暇もある?,それらの【恩恵を受けていれば得】ではありますね。
ただし「業務委託契約」は契約外業務や嫌な仕事は断れますが,「労働雇用契約」は会社/上司の命令に従わないといけません。契約書はどうなっているんでしょうね?
[A]大手フィットネスクラブにて[雇用契約=給与所得]でレッスンを行い,
[B]違うヨガスタジオにて[業務委託契約=事業所得]でレッスンを行っている,インストラクターが周りに何人もいます。
基本的な考え方として,
*[A]部分は,経費を計上することが出来ません。
*[A]金額には,レッスンフィーの他に,通勤代(電車運賃)が含まれていると思いますが,交通費として支出の経費とすることが(原則として)出来ません。衣装代・研修参加費用なども不可です。それらも含めて65万円が経費として引かれる(給与所得控除65万円)仕組みだからです。(65万円は経費に相当する金額として引かれるのです。)
*[B]部分は,事業をする上で必要とした経費を計上出来ます。
*経費を計上するには,白色申告または青色申告が必要です。(青色申告は,さらに事前に届出が必要です。後述)Aと比べてあまりにもBが低額であれば(生活を営む収入となり得ない小規模であれば),「事業所得」ではなく「雑所得」になり,経費は引けません。
*一般的にサービス業の経費率は50%ですから,「経費支出は[B]金額の半分まで」を目安にするのが妥当です。(勿論,個人利用/家事消費分ではなく事業に使ったことが客観的に分かり,かつ明確に区分できる証憑があれば,50%を超えても良いわけですが。)
*青色申告では複式簿記で記録を付けなければなりませんが,その場合は「交通費」は「支出・経費」ではなく「立替金」になります。(その方が実態に即しており,かつ売上金額がその分減らせて,節税になります。複式簿記については後述)
「売上金額」と「所得金額」の違い
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売上と所得の違いを図解すると
売上(収入)金額とは,文字通り「その一年間で売り上げた・稼いだ金額の総計」です。
いっぽう各種「所得」金額とは,売上(収入)金額から(売り上げるために掛かった)経費や「青色申告特別控除」を引いた金額です。
売 上 (収入金額) 経 費 利 益 (売上から経費を差し引いた) 青色申告特別控除
(10万円or65万円)事業所得
(利益から青色申告特別控除を差し引いた)所得控除
(健康保険料税や年金掛金など)
& 基礎控除(38万円)課税所得 税率※ 所得税
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仮想1:売上が300万円と仮定,青色申告特別控除の場合,
売上300万円 ※事業所得の前提です。 経費150万円と仮定
経費率50%が妥当利益(売上マイナス経費)150万円
給与所得の場合は経費を計上できない,65万円が控除されるのみ。青色申告特別控除
65万円事業所得(150-65=)85万円 所得控除36万円
& 基礎控除36万円
計74万円※仮定課税所得11万円 税率5%※ 所得税5615円
※所得税:課税所得金額195万円以下は5%。ただし復興特別所得税2.1%が加算されるため,11万円の5%である5500円に,5500円の2.1%である115円が加算されて,5615円。
#すでに支払った源泉所得税(売上300万円の10.21%分として)30万6300円。(インストラクター・パーソナルトレーナーとして10%源泉徴収されていることを前提としています。給与支払い団体になっていない事業所では源泉徴収されませんので御注意を)
#所得税5615円のところ,すでに源泉所得税30万6300円を払ったので,差額「30万685円が戻る」ことになります。(注)ただし扶養控除があったり,住宅ローンがあって特別控除を使ったり,また健康保険料税は市区町村で変わりますので想定した18万では無い方も多いでしょう。
仮想2(上図と比べてみましょう):売上が300万円と仮定,青色申告ではない場合,
売上300万円 経費100万円※ 利益(売上マイナス経費)200万円 0 ※青色申告特別控除なし
事業所得200万円所得控除
74万円課税所得126万円 税率5% 所得税6万4323円という金額に
※所得税:課税所得金額195万円以下は5%。ただし復興特別所得税2.1%が加算されるため,126万円の5%である6万3000円に,6万3000円の2.1%である1323円が加算されて,6万4323円。
#すでに支払った源泉所得税(売上300万円の10.21%分として)30万6300円と仮定します。
#所得税6万4323円のところ,すでに源泉所得税30万6300円を払ったので,差額「24万1977円が戻る」ことになります。
★仮の計算ながら「青色申告の方が,6万円ほど(5万8700円)還付金が多く戻ってくる」といったところです。(最大の違いは65万円控除ですから、税率が10%の場合は6万5千円が変わりますね。もっと売り上げが多く税率が高い方は,もっと青色申告の方が得になります。20%なら13万円)
さらに課税所得金額が低くなったことで,それから算定される「健康保険料」や「住民税」も数万円けっこう安くなります。(税理士に依頼すると10万円ほど掛かると思いますが,それ以上に手元に戻って来ます。自分でやれば全部自分の物ですね。)
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【根本的な注意点】確定申告で戻ってくるお金=還付金の最大値は,源泉税の金額です
税務事務所で働いていた際に,根本的な相談をしてくる方がいました。「これ以上,お金が戻って来ませんか?」と。
切実な問題ではあるでしょうけれど,確定申告は「税金の正しい金額を計算し,既に(会社に)源泉徴収されて(会社が代わりに)支払っている税金金額が,少なければ差額を支払い,多ければ差額を返して貰える」制度です。
したがって,その差額以上の金額は戻って来ませんし,そもそも源泉徴収の金額が少ない場合に,その金額を超えてお金が貰える訳ではありません。「支払調書」の源泉税額を見てみましょう。
(7)青色申告とは
確定申告には,3種類の方式があります。
青色申告の種類(3種類)
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[1]白色申告
※青色申告届を提出していない場合は,この方式です。
...ただし課税金額は税務署長が確定(経費としていくら差し引けるかは同業他社と比較して税務署が修正)するため,ほぼ申告通りにはなりません。「青色申告特別控除」もありません。
法改正(2014年4月~)にて,白色申告でも記帳(帳簿をつけること)が義務化されたので,結局は収支報告のための日々帳簿付け作業をしなければならない訳です。
[2]青色申告の¥10万控除
※簡単な帳簿付け=【簡易簿記】で申告できる方式
…現金出納帳などの書類を備えなければなりませんが,「青色申告特別控除」として10万円を差し引いて課税所得が計算されます。(実際に経費として使って無くても・領収書が無くても,利益から10万円引いて計算しても良いよ,という特典です。)
[3]青色申告の¥65万控除
※正規の帳簿付け=【複式簿記】で申告する方式
…申告に「損益計算書」と「貸借対照表」が必要で,そのために「仕訳帳」と「総勘定元帳」を備えなければなりませんが,
「青色申告特別控除」として65万円を差し引いて課税所得が計算されます。(実際に経費として使って無くても・領収書が無くても,利益から65万円引いて計算しても良いよ,という特典です。)
これはかなり恩恵が大きい!!のですが,少なくとも会計ソフト(安いものは数千円~,名の知れた会計ソフトは1万数千円)が必要です。税理士に数万円を支払って作業の代行を依頼しても,おそらくそれを上回る還付金が手元に来るでしょうけれども。
「経費」を確かに差し引けるのは「青色申告」! それと「青色申告特別控除」があって,さらに引ける! 「所得控除」は,白色申告でも青色申告でも同じですが,ずいぶんと所得税の計算の元になる金額が小さくなった訳です。
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(『青色申告』制度の7大特典)
(1)課税所得から(最大)65万円を控除できる
...実際の売上金額から65万円を差し引いた金額が,税額計算に用いられる。ただし複式簿記を選択した場合であって,簡易簿記を選択すると10万円になる。
(2)家事関連費が必要経費として認められる
...自宅を事務所とする場合,家賃・水光熱費・通信費などの一部を必要経費として申告できる。その分を経費として,実際の売上金額から差し引いた金額が,税額計算に用いられる。白色申告でも計上できない訳ではありませんが,同業他社他人と比較して経費が多い場合は税務署で権限で経費を削られてしまいます。
(3)家族の給与も全額必要経費として計上できる
...夫婦や親子で商売している場合,家族に給与を支払っている分を経費として,実際の売上金額から差し引いた金額が,税額計算に用いられる。ただし事前申請が必要です。白色申告でも「専従者控除」があるが控除額が低く,青色申告の場合は全額経費にすることが出来る。
(4)純損失(赤字)の繰り越し控除ができる
...白色申告ではその年の所得税を安く出来るだけだが,青色申告では翌年以降も安くすることが出来る。
(5)棚卸資産の評価を低くして,資産計上の割合を下げることが出来る
...インストラクター・パーソナルトレーナーは物品を仕入れて販売する仕事ではないので当てはまりませんが,青色申告では棚卸資産の評価に「原価法」以外に「低価法」が採れるので,実際の資産価値に合わせた資産計上ができるのです。
(6)減価償却において,一括償却などの特例を適用でき,必要経費を増やすことが出来る。
(7)売掛金を必要経費として計上できる。
青色申告には税務署届出が必要
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青色申告を受けるには,税務署への届出が必要です!!
1月16日より3月15日までに申請を受け付けてくれます。したがって,次の機会[1月16日より3月15日]が来年の場合は,来年分の所得を青色申告で行えるため,さ来年の申告時に青色申告が可能な訳です。一年先になりますのでご注意下さい。
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