
(1)『スキル』=インストラクターとしての質・価値を高める
良いレッスンとは,どのようなものでしょうか?
(1-1)レッスン査定項目
-
おそらく一つの指標は「レッスン参加者数」です。
参加者数は,曜日・時間帯や,年齢層と開催講座の整合,裏番組の集客力など複数の要因が絡むので,あくまで一つの目安ですけれども。(インストラクター個人の力量だけでは推し量りきれない要素があるのは言うまでもありません)
参加者が多く集まるレッスンとは,どのようなレッスンなのでしょうか?
それは多くのスポーツクラブ・フィットネスクラブ/カルチャーセンターで,昔からずっと検討されてきた課題です。
その一つの産物が「レッスン査定項目」です。ここではその査定項目を精査することにより,良いレッスンの一つの基軸を提供してみたいと考えます。
それは良いレッスンの一つの定義を与えるだけでなく,店舗にあってはレッスンの評価指標の一つですし,インストラクターにとっては自己評価の一助となるでしょう。
-
セントラルスポーツ某店研修にて,レッスン品質向上(インストラクター資質向上)に寄与すべく,この資料を提示しました(2011/6/25,2012/2/25)が,
大手フィットネスクラブでは長引く不況により会員数が減少傾向にあり,会員数が減れば来館者数やレッスン参加者数も減ることとなり,インストラクターにとっても死活問題です。
実際に「次期スケジュールで担当から外される」「不人気を理由にレッスンが消滅する」なんてことも少なくありません。また「定休日の変更」という方法で営業日数を減らす(主因は電力節減に託けた経費節減でしょうか)(東日本大震災当時)事態も起きました。
レッスンが消滅する可能性・危険性は常にありますが,参加者数が多いレッスンであれば生き残れるということでもあります。
インストラクターの皆様,このチェックシートを活用して生き延びましょう。
(1-2)レッスン前の集客
(1-2-1)レッスン前告知
-
多くの方がスタジオ扉前で行っている「それではレッスンを始めマース」ですが,それは「集客」ではなくて「始まりの合図」ですね。
(1)ジムエリアなどで
「まもなく○○スタジオにて,△△レッスンを行います。このクラスは・・・(レッスン解説)・・・。どうぞご参加をお待ちしております。」
などと全体告知=アピールして,
(2)スタジオ前で興味のありそうな方にお声掛け,
するのが基本だと思慮します。
(スタジオとジムが別階であれば,なおさら必要です)
-
私はこの業界に2桁居ますが,毎回必ずジムで(館内放送でなくジムエリアで地声で)告知~レッスン集客をしていますが,
何も集客しないインストラクターも少なくありません。というか,集客しているインストラクターは,ほとんどいません。新米の頃はやっていたでしょうか?
最近の若いインストラクターは先輩から教えて貰えなくて?可愛そう?なのか,ちっとも集客していません。
かといって10人にも満たない参加者でレッスンをしていたりします。そのクセ「"今日は"この時間はお客さんが集まらない」と"毎週"言ってるインストラクターも居ます。
ちなみに毎回40名弱集まるレッスンにて,「先生,別にジムでご案内しなくても良いんじゃないの? 充分に参加者は多いわよ。」という声をお客様から頂いた時もありましたが,
実はジムで告知するのを合図としてスタジオに移動する(それまでストレッチしたり,軽く有酸素運動している)参加者も少なくないので,そうしているのです。
(1-2-2)レッスンPOP掲出
-
多くは店舗で用意してくれていると思いますが,それで不十分なら自作しましょう。
-
掲出していないインストラクターも散見しますが,よほど集客に自信があるのでなければ別ですが,ぜひ明示しましょう。
レッスン中,よく外から覗く方も居たりするでしょう?,来週は参加してくれるかもしれません。
(1-3)レッスンのオリジナリティ
-
【コリオレッスンと個性】
最近,『コリオレッスン※』が増えましたね。
{※種目の順序や回数が規定されているレッスン。例えば,レスミルズ・シリーズ(ボディパンプ,ボディコンバットなど)。誰が担当しても同じ内容のレッスンになる}
経験の浅い店舗スタッフがレッスンをしても遜色ないように,一定のレッスン品質を保って・安定供給するというこの業界のトレンドです。
フリーランスのインストラクターにとっては,まさに死活問題です。インストラクター総数が増えるし,業界が拡大している訳ではないので狭いパイを喰い合うことになるし。
逆に言えば,フリーランスのインストラクターなら,コリオレッスン・インストラクターを上回るレッスンを提供しなければならない訳です。レッスンそのものがすばらしい他に,「プログラム構成力」なども能力として必須となりましょう。
*動作の一つ一つに運動生理学的な裏づけはあるのか?
*効果が期待できる意味づけはあるのか?
*動きたくなる動機付けはあるのか?
*負荷やBPMなどは適切か?
などの吟味が必要です。
-
さらには,「(a)レッスンそのものの品質」と,「(b)インストラクターの個性」の双方が大切な要素であるとも言えます。
コリオレッスンの場合は,前者を大量生産している訳ですから,フリーランスのインストラクターとしてはそこで差をつけたい。
逆に言えば,店舗スタッフでコリオレッスンを担当している皆さんは「だったらキャラクター個性で勝負しましょう。」と励ましたいところです。
ただし将来フリーランスを目指すのであれば,非コリオレッスンを担当しても遜色ないように,今から勉強しておきましょう。
「社内研修認定だけで,レッスンを間違えずに行うだけのイントラになってしまっていては,レッスンの品質は向上しませんよ。」
「お客様はレッスンが良くて参加しているのか,インストラクター個性に魅力を感じて参加しているのか,勿論相乗効果なんだけど,双方の実力を伸ばしなさいよ。」
とアドバイスしたいところです。
(1-4)店舗スタッフと仲良くすること
-
「レッスンに参加して頂き,続けて頂く」こと,つまり「常連さんを作ること」は,どんな商売でも基本中の基本です。我々のレッスンもそう,ラーメン屋さんもそう。
(a)なるべく多くの方に参加して貰う(ための工夫や努力)
(b)参加した方に続けて参加して貰う(ための工夫や努力)
(a)なるべく多くの方に参加して貰う…新入会の方を如何にスタジオレッスンに誘うか。ジムしか利用していない方をいかにスタジオに誘うか。
(b)参加した方に続けて参加して貰う…参加者のニーズは何か。そのニーズに応える内容・構成カリキュラム,あるいは時間帯・スタジオ規模になっているか。
の両方が必要ですが,前者(a)はインストラクター個人では限界があります。
(a-1)新入会の方を如何にスタジオレッスンに誘うか。
→これはフロントスタッフにかかっています。フロントスタッフと仲良くしましょう!!
(a-2)ジムしか利用していない方をいかにスタジオに誘うか。
→これはジムスタッフにかかっています。ジムスタッフと仲良くしましょう!!
「レッスン・パーソナルセッションが終わったら,シャワーを浴びて,すぐ帰宅!!」ではなく,前後の時間をスタッフとのコミュニケーション時間に確保することも大切です。
-
*私田中は,スタッフに「一口お菓子」(チョコやビスケット)を差し上げています。
*レッスンの内容をプリントにして,スタッフに配ったりしています。
*レッスンへのスタッフ参加を大歓迎しています。(いつも満員になるクラスは不可ですが)
*店舗休館日に,スタッフ向けに無料レッスンをしたこともあります。
*物販セールや店舗イベントにも積極的に協力しています。
補足:「(1)なるべく多くの方に参加して貰う」について
フィットネスクラブにあっては,体験してくれた方を如何に入会して貰うか,その前提にどう体験者を増やすか,「体験入会率」なんて指標を追い掛けたりしますが,
我々インストラクターのレッスンやパーソナルトレーナーのトレーニングは,大きくその数値に関係する!!
と同時に,我々自身のレッスン・トレーニングそのものについても,「体験入会率」ならぬ「お試し参加→定着率」を高める努力をしなければ生き残れません。
(2)『素養』=インストラクター・パーソナルトレーナーとして注意すべき言動
(2-1)代行
-
インストラクターをしていると,直面するのが「代行」問題でしょう。代行の理由は,
*「体調不良」であったり,
*「資格取得」もしくは「取った資格の更新のための講習を受ける」であったり,
*「冠婚葬祭」であったり,
*「家族旅行などの家庭行事」「息子・娘の各種学校行事」であったり,
*「リフレッシュ旅行」など多岐に及びますし,
また代行者が見つからずに苦労することも多いのが実情でしょう。代行は,良く言えば「責任感の裏返し」(レッスンに穴を開けないために代理者を立てる)であるにも関わらず,却って会社側やお客様から信用を無くしてしまうことに悩むインストラクターもいらっしゃいますかね。
-
代行のデメリットは,「参加者(数)が減ることで,報酬金額が下がる。またはレッスン枠が無くなる(仕事を失う)」ことでしょう。
「インストラクター業は人気商売」であり,「その先生のレッスンを受けたくてお客様が参加し,また定着する」(お客様が定着し,料金が払われることで会社も儲かります)ため,本来は「他人が代行出来ない性質の業務」である所に,そうした代行問題の原因があるように思います。
つまりお客様も,会社側も「できるだけ代行して欲しくない」と思っているにも拘らず,その限度を超えて代行を発生させると,信用をなくす(参加者が減る,会社が減収する,インストラクターとしても評価が下がる,報酬金額が下がる)という単純なメカニズムなのかもしれません。
お客様に「あの先生のレッスンを受けたい,のに受けられない」という不満を抱かせてしまうのはマイナスです。年に数回だけしか行かない場所なら「この人じゃなきゃ嫌」は無いでしょうけれど,毎月通う美容院でも「この人じゃなきゃ嫌」な方にお願いするでしょう。
ましてレッスンであれば「毎週参加してくれる常連さん」を大切にしなければ,参加者(数)は減る一方です。止むを得ない理由で代行を立てるのは仕方ないとして,なるべく一度引き受けた曜日・時間帯は,責任を持って取り組まないといけませんね。
「最近夏休みが近いからか,代行打診のメールばっかりだよ。代行を気軽に?出しているインストラクターが最近多くて残念だな,これじゃインストラクターの社会的地位も向上しないな」と感じているのは,私だけでしょうか?
- もう一点,「業務委託契約書」に『代行』について記載されている場合が多いので,見直してみることも大切でしょう。
*一般的な業務委託(契約)(書)では,第三者への再委託を禁止している場合もあります。
(インストラクター(業務)は禁止されていなくても,パーソナルトレーナー(業務)では事実上禁止ですよね。というかお客様が他の方とやることも無いでしょうし,他の方に取って代わられるのも非常に切ない話でしょうし)
*代行が禁止されていなくても,条件がある場合があります。
(その会社と現に契約している者でなければならない,日本国籍を有していなければならない,など。)
*いつまでに申告するかが明記されている場合が多い。
(「1ヶ月前までに」など。契約書に明記されていなくても,厳守事項(書面)に明示されている場合も多い。)
*代行による減額などが規定されている場合もある。
*代行実施者には,代行発注者のレッスンフィー報酬金額と交通費が支払われるのか,それとも別の金額や交通費の実費が支払われるのか?
(自分よりフィーの高い方に依頼する場合は失礼の無い様にするべきでしょうし,交通費に不足額が生じることもあってはいけませんね)
(そういうこともあって,よく「御礼の品」が渡される場合も多いですよね。お菓子や旅行土産など。)
*代行者への支払もどのような手順なのか?
(代行発注者の銀行口座に(通常レッスンと同様に)振込まれるのか,先方の先生の口座?,レッスン後に現金手渡し?)
- (私田中が実際あった話では)
代行もイントラにとってはお互い様な話なので,自分のレッスンフィーより低い金額でも快諾しましたが,
発注者に振り込まれたレッスンフィーについて「いつものイントラデスクの引き出しにフィーもこっそり入れておきます―」なんて言われて唖然として,銀行口座番号を伝えて振り込んでもらったイントラもいました。
もうそんな人の代行は引き受けません。。
- もう一点,「業務委託契約書」に『代行』について記載されている場合が多いので,見直してみることも大切でしょう。
(2-2)報告書の記入
-
レッスンの報告書を記入すると思いますが,いい加減な記入が少なくありません。
{ レッスン内容「 元気よく,シンプルに 」 , 所感「 good!! 」 }
なんて書く方もいます。というか,結構います。
私がレッスン(スケジュール)担当者や支店長だったら,こんな"真剣だと思われない"人は雇いません。(苦笑) 雇い主に対する絶好のアピールの場なのに。。
-
「業務委託契約において事後報告(報告書の記入)は民法645条で定められている」ため,記入しないのは違法行為であり,報酬が減額されても意義を申し立てられなくなります。
ちなみに私,田中はこんな感じで書いています。
(2-3)言葉遣い
-
最近では以下のような事例が少なくありません。インストラクター・パーソナルトレーナーの資質低下などとも言われています,大量生産のマイナス面ですね。
*間違った日本語・言葉遣
*不快を与えかねない下品な言葉遣い
*お客様の一線が画されていない言動
-
【間違った日本語・言葉遣い】
◆「~のほう」 …方向を指し示す場合は許容されますが,大半は誤用されています。参加者名簿などに「こちらの方に,お名前の方を書いて下さい」なんて言う大学生アルバイトなど数多く居ます。(←ちなみに「恐れ入りますが,こちらにお名前をお書き下さいますでしょうか?」が正解です。実は「お書き"頂け"ますか」では厳密には間違いです。)
◆「~でよかったですか?」 …コンビニ敬語と揶揄されますが,過去形の意味が不明です。
◆「~となります」 …以前から指摘される定番単語ですね。
【不快を与えかねない下品な言葉遣い】
◆「お尻の穴」など表現が下品な単語 ・・・「お尻の真ん中」などと言い換えれば良い。ヨガ・ピラティスのイントラで,「お尻の穴を上に向けて」「お尻の穴を締めて」と発言する方は多いですね。下品であることに気付かないことの方が恥ずかしいです。
◆「生理」「膣」など直接的表現が忌避される女性独特の単語 …「女子の日」「赤ちゃんの空間」などと工夫しましょう。特に男性イントラ・スタッフが,女性に言ってはいけません。
【お客様の一線が画されていない言動】
◆平気で「食事に行く」とか「メールを遣り取りする」 …現在多くのフィットネスクラブでこれは厳禁とされており,懲罰対象になることに注意!
◆雑誌から得た情報をベラベラ話すのも不適切 …其の記事を科学的に分析して正しい・間違っているなどの情報伝達は良いが,真偽も分からぬままワイドショーの如く得意げに雑談するのは本末転倒~参加者はお金を払って受けていることに対して鈍感
◆政治の話はNGです …おそらく契約書で禁止されている筈です。
◆宗教の話はNGです …おそらく契約書で禁止されている筈です。
ところが,スピリチャルな話を得意げに話すのも要注意です。月齢や陰陽などの話が大好きなヨガインストラクターも多いですね。昔にオ○ム真理教が,ヨガセミナーで参加者を洗脳(イニシエーション)していたことが社会問題になりました。話題の提供だけならともかく,「こうしなさい・こうすべきです」とは内容がたとえ宗教でなく哲学領域でも,すべきではありません。
(2-4)接遇の精神(素養)
「個人事業主として気を付ける法律」については,「個人事業主の法令順守(コンプライアンス)」ページもご参照下さい。
(A)-1【業務委託契約はいつでも解除】(A)-2【進捗報告の義務】
(B)-1【レッスン中に音楽を流す】(B)-2【複製ダビングの注意】
(C)確定申告しなければいけないの?
(M)ブラック企業を見分ける
(N)マイナンバーの対応
弊団体所属トレーナーの記事